人と環境とが調和した、よい状況での心身の状態を適応といい、環境からの要請に応えようとして生活体が行動の仕方や考え方を変える努力をすることを適応行動という。通常の対処
反応で対応できないときに生体は、①新しい行動を学習する、②環境を変える、③環境から逃避する、④目指す状態を変更する、の4つの方法で適応しようとする。また、ストレッサーに対してストレス反応(心理学的反応、身体的反応、行動的反応、認知的反応)が起こり、それに適応できると危機が回避でき、恒常性(ホメオスタシス)を回復するが、不適応を起こすと危機となり、不均衡が持続し、疾病状態となる危険性がある。
シスター・カリスタ・ロイ(Sister Callista Roy)は、「ロイ適応看護論」の中で、変化に反応する人の適応様式として、生理的ニード様式、自己概念様式、役割機能の適応様式、相互依存の適応様式、の4つを挙げている。看護職者は、これらの適応様式の行動を全て統合してアセスメントをする必要があり、そのため、アセスメントに必要なデータは4つの様式全てにおいて収集、理解、解釈する必要がある。また、個人の適応反応を評価するためには、その人の潜在能力をよく理解することも重要である。
適応の考え方は、個人のみならず、多様なシステムすなわち、家族、集団、地域などにも適用することが可能である。
参考文献
1)日本看護科学学会看護学学術用語検討委員会(編):看護学学術用語,日本看護科学学会第4期学術用語検討委員会, 1995.
2)小田正枝(編):ロイ適応看護理論の理解と実践,医学書院,2009.
3)谷口弘一,福岡欣治(編・著):対人関係と適応の心理学-ストレス対処の理論と実践,北大路書房,2006.