不安 anxiety

不安とは、漠然とした不確かで頼りない気持ちであり、自分自身の存在価値が揺るがされるときに生じる感情である。不安は不特定または不確かな脅威によって生じる感情である。これに対して、恐怖は特定の対象による明確な脅威によってもたらされる感情であるとされている。
不安の兆候は身体、心理、認知、対人関係などに広く表れ、身体面には、通常、自律神経系の反応を伴い、脈・呼吸数の増加、口渇、発汗、尿回数の増加、排便の変化、食欲の低下、過食、悪心、嘔吐、不眠などを認める。自律神経系の反応の他に、落着きのなさ、手の震え、身震い、まとまりや一貫性のなさ、イライラする、また憂うつ、自己卑下、自信がないなどの情緒的反応として自覚される。不安は認知レベルに(や?)対人関係にも表れる。
不安は軽度、中程度、重度、パニック状態に分類される。不安は、自己保存本能からくる危険信号として有用であり、軽度の不安は、注意力を高め、学習や変化への刺激となり、成長をもたらす。しかし、不安が強度になり、持続時間が長くなったり、場面にそぐわず反復して表れるようになると病的不安となる。
健康課題をもつ人は多かれ少なかれ不安を抱えているので、看護職としては、不安の兆候とその程度をアセスメントし、適切な不安緩和を図ることが必要である。
参考文献
1)日本看護科学学会看護学学術用語検討委員会(編):看護学学術用語,日本看護科学学会第4期学術用語検討委員会, 1995.
2)野嶋佐由美, 南裕子(監):ナースによる心のケアハンドブック―現象の理解と介入方法, 照林社, 2000.
3)G.W.Stuart, S.J.Sundeen(著)/樋口康子,稲岡文昭,南裕子(監):新臨床看護学大系 精神看護学2, 医学書院, 1986.