調整 coordination

用語の定義

コーディネーションとは、多職種チームにおいて看護師が、患者家族が最善の医療やケアを受けられるよう、患者・家族の意向をくみ取り、その意向を基に多職種チームが同じ目標に向かって推進していけるよう関係者間の情報や関係性をつなぐことである。そして、患者・家族に生じる課題や問題に対する解決方法を多職種チームで思案し、関係者全員が合意できるよう整え、さらに、組織のシステムをより現状に合ったものへと作り上げていくために調節することである。

用語の解説

・コーディネーションは、患者・家族を含む多職種チーム(以下、チームとする)内で看護師が活動する際に行われることが多く、患者や家族に最善の医療やケアを提供するために重要な用語である。
コーディネーションの一般的な用語の意味は、広辞苑によると「調和よく組み合わせること」「物事を調整してまとめ上げること」という意味をもつ用語であり、調整するだけでなく、まとめあげるといった意味合いを含んでいる。
コーディネーション(coordination)に関する先行研究では(飯岡・大場・廣田他,2023;岡野・上野・大川,2018;大原・河井・黒田他,2019;牛塲・林・井村,2022)、コーディネーションは、チームメンバーである患者(対象者)、家族、病院内外の関係職種、さらに機関との間で行われている。
コーディネーションは、看護師が患者(対象者)と家族の意向をくみ取り、その意向を基にチームの関係者が目標を設定し、チームが一つとなって最善の医療やケアが提供できるようにチーム内の関係性を構築することを意味している。そして、その活動を行う際に生じる課題や問題に対して、チーム内で解決策を思案し、合意した最善策がでるように整えていくこと、さらに、現状のシステムがより良い状態へと発展するように調節する意味を含んでいる。

「コーディネーション」と「調整」の用語の比較
看護における「調整」の用語は、看護の対象となる人々やケア提供者のために資源を活用する際に、重複を除きかつ効率よく利用するために、便利な組織構造を作るためのアプローチである(日本看護科学学会の用語集)。一方「コーディネーション」は、チームの関係者間の関係構築に加え、患者や家族に対して生じる課題や問題への解決策をチームの関係者間で思案し合意できるように整え、組織におけるシステムをより良いシステムとなるよう調節することであり、「調整」よりも広義な意味合いを含む用語といえる。

引用・参考文献

1) 千葉武揚(2018):看護における「調整」の概念分析,日本ヒューマン科学会誌,11(2),1-10.
2) 飯岡由紀子・杉本知子・辻恵子(2022):看護師の調整力(コーディネート力)の概念分析,日看教会誌,32(2),15-26.
3) 飯岡由紀子・大場良子・廣田千穂他(2023):多職種連携におけるコーディネート力尺度(MCAS)の開発‐がん医療に携わる医療専門職を対象とした信頼性と妥当性の検討‐, Palliat Care Res,18(1),1-10.
4) 日本看護科学学会:看護学を構成する重要な用語集,Retrieved from:https://scientific-nursing-terminology.org/terms/coordination/(検索日:2023年11月5日)
5) 岡野朋美・上野昌江・大川聡子(2018):保健師のコーディネーションの概念分析,大阪府大看誌,24(1),21-30.
6) 大原裕子・河井伸子・黒田久美子他(2019):高齢者ケアの継続に向けた急性期病院看護師のコーディネート機能(第1報:看護師の視点から),日看科会誌,39,202-210.
7) 牛塲かおり・林智子・井村和積(2022):退院支援における病棟看護師のコーディネーションの概念分析,日看科会誌,42,422-428.

 (2024年2月1日掲載)

 

 

 

調整(コーディネーション)とは、看護の対象となる人々やケア提供者のために資源を活用する際に、重複を省きかつ効率よく利用するために、便利な組織構造を作るためのアプローチである。他の専門職と協働するためのアプローチの一つである。また調整とは、管理職能の重要な要素の一つであり、組織に生じた葛藤や困難ごとあるいは問題を解決し、組織共通の目標を達成するために内部均衡を図っていくこととされている。
チームの中心である患者家族が最良の健康状態を得られるように、チームの一員である専門職者がそれぞれの専門性を発揮し、協働することを目指すチームアプローチにおいて、看護職者が担う調整役割は重要である。看護職者は患者家族のニーズを把握し、チーム全体がそれらを認識、理解できるように橋渡しをする役割が求められている。
日本では専門看護師機能の一つとして調整が位置づけられている。専門看護師が行う調整による成果としては、①医療チーム全体でケアをする体制が整う、②医療者間の葛藤が軽減する、③治療に必要な他部門や他職種への橋渡しができる、④患者の早期回復・退院の促進などが挙げられている。
参考文献
1)佐藤直子(著):専門看護制度―理論と実践,医学書院, p.108,1999.
2)野末聖香(編・著):リエゾン精神看護―患者ケアとナース支援のために,p.299,医歯薬出版, 2004.

第9,10期看護学学術用語検討委員会2011年6月24日