対処(コーピング) coping

対処とは、人間が脅威や課題などによるストレス状態におかれたとき、その場の状況の混乱や危機を回避・克服するために、自己の判断で意思決定し行動することをいう。リチャード・ラザルス(R.S. Lazarus)とスーザン・フォルクマン(S. Folkman)は、対処を、個人の資源に負荷を与える、またはその資源を超えると評価された外的内的要求を処理するために行う個人の絶え間ない努力であるとし、常に変化する動的なプロセスとして捉えている。
対処のプロセスは、認知的評価によって規定される。対処は、個人の価値観、自我の強さ、教育が関与しており、独自の行動様式が形成される。また、対処は、苦痛をもたらす厄介な問題を巧みに処理し変化させていくという問題中心の対処と、厄介な問題に対する情動反応を調整していくという情動中心の対処の機能に大別される。それらの対処は、互いに促進したり抑制したりして、ストレスフルな刺激によって生じる情動を処理している。対処が有効な場合、ストレス人間の成長を助け、そうでない場合はストレスが増強し生命力を消耗させる。健康とエネルギー、積極的な信念、問題解決の技能、社会的スキル、ソーシャル・サポートでは、金銭などの資源は対処の原動力であり、それらの資源が十分である場合、効果的な対処が可能となる。
看護職者は、看護の対象となる人々が体験しているストレスに対する対処方法を支援することが求められているがゆえに、様々な場面で、対処に関する知識や援助技術を活用している。
参考文献
1)看護学学術用語,日本看護科学学会第4期学術用語検討委員会, 1995.
2)Richard S. Lazarus(講演)/林峻一郎(編・訳):ストレスとコーピング-ラザルス理論への招待,星和書店,1990.
3)加藤司(著):対人ストレスコーピングハンドブック-人間関係のストレスにどう立ち向かうか,ナカニシヤ出版,2008.
4)R.S.Lazarus , S.Folkman(著)/本明寛, 春木豊, 織田正美(訳):ストレスの心理学―認知的評価と対処の研究, 実務教育出版, 1991.