共感 empathy

共感とは、一般的には他人の体験する感情を自分のもののように感じとることであり、他者理解の概念として知られている。
共感は「他者と同じ感情をもつこと」(情動としての共感)と「他者の感情がわかること」(認知としての共感)に大別される。いずれにしても、共感は、他者の思考や感情を理解する能力であり、他者が知覚するように外界を知覚することである。
類似した概念に「同情」があるが、共感は過度の自己投入や自分を失うことをしないという点からこの「同情」とは異なるとされる。看護における共感概念は、その多くを心理学的定義から援用しており、「他者の立場を自分自身のように感じながらも、自己を他者に同一化せず独立させること」ということができる。また、そこには、共感が単なる他者理解にとどまらず、相手に共感していることや理解していることを伝達することができてはじめて、共感が成立するとの見方もある。共感を伝達することで、相互理解という親密な関係性を確立することができ、専門職としても患者-看護師関係を形成することができる。看護学において共感は重要な基礎概念であるとともに、実践に欠かせない能力として基礎教育のときから、共感能力の育成に取り組んでいる。
参考文献
1)Carol Leppanen Montgomery(著)/神郡博,濱畑章子(訳):ケアリングの理論と実践-コミュニケーションによる癒し,医学書院,1996.
2)広瀬寛子(著):看護カウンセリング 第2版, 医学書院, 2003.
3)Joyce Travelbee(著)/長谷川浩, 藤枝知子(訳):トラベルビー 人間対人間の看護, 医学書院, 1974.