エンパワーメント empowerment

エンパワーメントとは、「権限を委譲する」という意味をもつ用語で1960年代から人種差別や女性運動など社会的に脆弱性を有する人々が、自己のもつ力を発揮できるよう社会や環境を変革するという考えのもと提唱された概念である。
看護では、まず看護管理領域に導入され、看護職の自立性や決定権を保障することに主眼がおかれていたが、その後、看護の援助のあり方として注目されるようになった。看護の援助としてのエンパワーメントとは、「人々が自己の生活をコントロールし、決定する能力を開花させていくプロセス」を意味し、看護職がパートナーシップを形成し、そのもつ力を引き出し、看護の対象となる人々が自己決定・実行できるよう関わることをさす。
エンパワーメントは相手との協働関係と信頼の上に生じるものであり、誰でも自らが成長する力や自己決定する力をもっているという考えを前提とし、保健医療者は相手が本来もつ力を発揮しさらに強化できるよう資源や環境を提供する役割をもつ。
エンパワーメントの対象は個人だけでなく、家族、集団組織、地域、社会と様々であり、またその意味もプロセスに焦点を当てる考えだけでなく、結果として捉える考えなどがあり、エンパワーメントの概念は幅広く使われている。

参考文献
1)J. R. Cutcliffe, H. P. McKenna(著)/山田智恵里(監訳):看護の重要コンセプト20―看護分野における概念分析の試み, エルゼビア・ジャパン, 2008.
2)野嶋佐由美(監),中野綾美(編):家族エンパワーメントをもたらす看護実践,へるす出版,2005.
3)井上孝代(編・著):マクロ・カウンセリング実践シリーズ エンパワーメントのカウンセリング-共生的社会支援の基礎,川島書店,2008.