排泄とは、代謝産物や老廃物を体外に排出するシステムのことである。生命維持に不可欠な基本的欲求の一つであり、日常生活行動でもある。排泄物には、尿、便、喀痰、水(汗や不感蒸泄として)のほか、月経血、外傷や侵襲的処置に伴う排液、広くは呼気に含まれる二酸化炭素などがあるが、一般的には尿・便をさす。これらの排泄物や、食物や水分の摂取状況とのバランスなどは、身体内部の状態を推測する上での重要な情報源である。
生理学的側面からは、排泄器官の働きや排泄物について、それらが生理的で正常であるかどうかという視点で捉えられる。しかし、排泄は、生理的な快・不快感を伴い、自尊感情に深く影響することや、生殖器と密接に関係しているためタブー視されたり、汚いものといったイメージが強く、羞恥心を招きやすいなど、心理・社会的な意味ももっている。また、日常生活行動としての排泄は、文化によって影響を受ける。生理学的には正常な排泄であっても、排泄に伴う苦痛や気兼ねなどがあれば、そのニーズが充足されているとは言い難い。また、排泄行動は、移動や姿勢保持、関節運動などの身体機能や、排泄行為に関わる生活様式や習慣などからも影響を受けている。
看護職者は、排泄を人間の基本的なニーズであり生命の証と捉え、生理学的側面だけでなく、身体の機能的側面や心理・社会的、文化的な側面からもその人の排泄を援助する。
参考文献
1)Ruth F. Craven, Constance J. Hirnle(著)/藤村龍子,中木高夫(監訳):基礎看護科学,医学書院,1996.
2)菱沼典子:改訂版 看護形態機能学―生活行動からみるからだ,日本看護協会出版会,2006.
3)Karen Holland,Jane Jenkins,Jackie Solomon,他(編)/川島みどり(監訳):ローパー・ローガン・ティアニーによる生活行動看護モデルの展開,エルゼビア・ジャパン,2006.