病気 illness (disease)

病気とは、生体がその構造や機能に障害を起こし、苦痛や不快感が発生して日常生活に支障をきたす状態である。客観的判断に基づいて病気を論じる立場と主観的判断に基づいて病気を論じる立場、さらに文化や社会との関係を踏まえて病気を論じる立場が見られる。
医学用語では、客観的な医学的診断基準に基づいて分類されたものとして、病気という用語よりも疾病(disease)という用語を用いる。身体的に異常な状態があると、エビデンスに基づいてその状態に適合する診断名が下り、疾病となる。科学進歩に基づき医学が発達し、多数の疾病が認められるようになった。この考え方では、疾病の分類、病因、診断方法、治療方法の専門的知識と技術に基づいて、看護を実践していくことが求められる。
主観的判断に基づき病気を論じる立場からは、疾病をどのように解釈し体験するかは、個人個人によって異なることを強調し、疾病の体験を踏まえて病気(illness)として捉える。この考え方では、病気体験を理解する姿勢を重視し、病気についての解釈、病気からの回復・療養などについてどのように考えているかを聴き、共によい健康な状態へと導いていくことを重視している。
健康の連続線という考え方からすると、健康と病気の間には、簡単に境界線を引き、分けることができない非常に複雑な関係が成り立っていること、さらに、この線引きに文化や社会制度が強く関わっていることも忘れてはならない。
参考文献
1)山口和克(監):新版 病気の地図帳,講談社,2000.
2)Florence Nightingale (著)/薄井担子, 小玉香津子, 他(訳):看護小論集-健康とは病気とは看護とは,現代社,2003.
3)岡堂哲雄(著):シリーズ患者・家族の心理と看護ケア(1) 病気と人間行動,中央法規出版,1987.