疼痛 pain

疼痛とは、痛みの医学用語である。疼痛は人間にとって排除あるいは緩和したい不快な体験である。一方で、疼痛は傷害から身を守るための警報信号としての意味もある。
疼痛は、発生する原因によって、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛、心因性疼痛に分類される。身体的痛みを示す侵害受容性疼痛は、物理的あるいは化学的な刺激を感覚受容器が感知し、電気信号に変換された刺激が末梢神経(Aδ線維とC線維)を介して大脳へと伝えられ、大脳がこれを痛みとして認識することで発生する。神経因性疼痛や心因性疼痛については、その発生機序は明らかではない。また、発生の仕方や持続期間によって、急性疼痛と慢性疼痛という分類の仕方がある。
疼痛は体験している人の主観的・情動的な体験であり、その感じ方は個別的で、様々な物理的、心理的、文化的要因の影響を受ける。一般に、不安や孤独、疲労、不眠などは疼痛閾値(疼痛の感じやすさ)を低下させ、周囲の人の疼痛への共感や疼痛の意味・成り行きについての理解、休息、注意転換などは閾値を上昇させる因子となる。
看護職者は、医師の指示による薬物療法を効果的に実施するとともに、疼痛閾値を上げるよう疼痛の増強因子、緩和因子に働きかける。そして、緩和ケアでは疼痛コントロールが最も重要視される。
参考文献
1)柳田尚(著):看護に役立つ臨床疼痛学,日本看護協会出版会,1996.
2)深井喜代子(編):看護者発痛みへの挑戦,へるす出版,2004.
3)深井喜代子(監):実践へのフィードバックで活かす―ケア技術のエビデンス,へるす出版,2006.