自己実現 self-actualization

自己実現とは、自己の発達の可能性を成就することをいう。自己実現について、カール・ロジャーズ(C.R.Rogers)は、人が自己の内に潜在している可能性を最大限に実現して生きることと概念化し、健全な人間を、人の一生において最も重要な目標を定めて努力する存在であるとしている。また、アブラハム・マズロー(A.H.Maslow)は、自己実現を可能性・能力・才能の絶えざる実現と使命の達成、個人自らの本性についての知識や受容、人格内の一致などを挙げている。カール・ユング(C.G.Jung)は、自己実現を個性化と同義語に用いて、個性化を自己性への到達あるいは自己実現化と言い換えることができるとし、個性化は追い求めるべき目標であるが、稀にしか到達されないものであり、さらに、個性化した人間とは、人格の全側面が調和的な均衡状態を成就しており、自己が統合された人間であるとしている。
看護では、人間基本的欲求の最終段階において、その人らしい生活を最大限に実現して生きるときに自己実現を用いることが多い。看護の対象となる人々は、疾患、障害、健康課題などを様々な脆弱性を抱えている。それゆえに、看護職者は個々の人の立場に立って、その人らしい自己実現か可能となるよう、専門的知識と看護援助技術を活用して支援していくことが求められている。
参考文献
1)Carl R. Rogers (著)/諸富祥彦, 保坂亨, 末武康弘(訳):ロジャーズ主要著作集 ロジャーズが語る自己実現の道, 岩崎学術出版社, 2005.
2)Frank Coble (著) /小口忠彦(監訳):マズローの心理学, 産業能率大学出版部,1972.
3)千原美重子 (著):人間関係の発達臨床心理学―自己実現への旅立ち, 昭和堂, 2006.