自己概念とは、自分自身について抱いている概念で、自己の外見や性質、行動、能力、価値などの全体に関する認知と評価、感情を含んだものとされ、「自己同一性(アイデンティティ)」「身体像(ボディイメージ)」「自尊感情」「理想自己」「役割」から構成されている。
自己概念は、自己観察や周囲の人々との相互作用、文化や社会的習慣などの影響を通して後天的に形成されていく。自己概念の発達において幼児期には親からの影響が大きいが、その後、成長発達とともに、様々な体験を通して自己概念は明確に形成されてくる。
自己概念はその人の行動や思考の基盤を形成するものであり、人は自己概念に沿った振る舞いをするとされる。従って、その人の行動を理解するためには自己概念を理解することが重要となる。
身体像の変化や歩行障害など、生活機能の喪失を伴う健康障害を負ったときには、人は現実の自己と理想自己との不一致により自己概念を否定的に変容させ、自尊心を低下させることがある。こうした自己概念における問題は精神的な安定性を欠き、人間の治癒力や健康維持に必要な能力を阻害するとされる。
シスター・カリスタ・ロイ(S.C.Roy)は、自己概念を看護実践に取り入れ、すなわち、変化に反応する人の適応様式の中の一つとして自己概念様式を取り入れている。看護実践においては、自己概念様式に関するデータを収集、理解、解釈してアセスメントすることや、適応に向けて自己概念に関する援助が必要であると説いている。
参考文献
1)G.W.Stuart,S.J.Sundeen (編・著)/樋口康子,稲岡文昭,今井敬子(監訳):新臨床看護学大系 精神看護学1,医学書院, 1986.
2)遠藤辰雄(編):アイデンティティの心理学,ナカニシヤ出版,1981.
3)S.C.Roy(著)/松木光子(監訳):ロイ適応看護モデル序説 第2版,へるす出版,1998.