ストレス stress

ストレスとは、心身の負担になる刺激や出来事・状況により個体内部に生じる緊張状態をいう。ホームズ(T.H.Holmes)とレイ(R.H.Rahe)らは、ストレスを生活上の変化であるとし、個人の生活に変化を引き起こす様々な出来事と疾病との関連を示した。ハリス・セリエ(H. Selye)は、ストレスを、有害刺激に対する一連の生理的反応であるとし、有害刺激(ストレッサー)によって身体に現れる副腎皮質の肥大、胸腺・リンパ腺の委縮、胃・十二指腸潰瘍や出血などの非特異的な生理学的反応を汎適応症候群と命名した。リチャード・ラザルス(R.S. Lazarus)とスーザン・フォルクマン(S. Folkman)は、ストレスを、人間人間と環境との特定な関係であるとし、その関係とは、その人の原動力に負担をかけたり、資源を超えたり、幸福を脅かしたりすると評価されるものであるとした。ラザルスらは、心理的ストレスに関与するのは、生活に変化を引き起こす大きな出来事よりも日常の些細な苛立ちごと、持続する不快な感情などであり、そのような状況に対する人間の反応は一様ではなく、その状況がストレスになるかどうかは個人の認知的評価によって左右されるとしている。適度なストレスは、活動のエネルギーとなって人間の成長・発達を促すが、過剰なストレスは健康障害を引き起こすなど有害となる。
看護の対象となる人々は疾患や障害、あるいは健康課題のために多かれ少なかれストレス状態で生きていると考えられ、それゆえに看護職者は、専門的な看護援助技術を活用して、ストレス状態からの回復やストレス状況からの脱却に向けて援助することが求められる。
参考文献
1)R.S.Lazarus , S.Folkman(著)/本明寛, 春木豊, 織田正美(訳):ストレスの心理学―認知的評価と対処の研究, 実務教育出版,1991.
2)Richard S. Lazarus(講演)/林峻一郎(編・訳):ストレスとコーピング-ラザルス理論への招待,星和書店,1990.
3)小杉正太郎(編・著):ストレス心理学―個人差のプロセスとコーピング,川島書店,2004(←2002?).