看護師の倫理綱領 Code of Ethics for Nurses

倫理綱領とは、自律的かつ自制的であるべき専門職に不可欠な倫理的行為の基準を定め、社会に表明し、それを遵守することを成員に求める、専門職による専門職のための指針である。倫理綱領をはじめとする道徳的指針には、価値、義務、徳の3つの要素が含まれる。それは、専門的実践の目的である価値、職業に従事する上での専門職としての道徳的義務、そして当該専門職に期待する徳、すなわちよい性格である。
看護師の倫理綱領としては、国際看護師協会(ICN)によって1923年に国際的な倫理コード(規定と訳されることもある)の検討が開始され、1953年に「看護国際道徳律」が採択された。何回かの改訂を経て現在は、前文に「看護師と人々」「看護師と実践」「看護師と看護専門職」「看護師と協働者」という4つの基本領域における行動基準、活用方法が挙げられている。日本看護協会は1988年、10条からなる「看護師の倫理規定」を定め、15年後にあたる2003年に15条に拡充した「看護者の倫理綱領」として改訂した。そして、この「看護者の倫理綱領」は、専門職として引き受ける責任の範囲を社会に対して明示するものであるとともに、看護実践を展開する上での行動指針であり、実践を振り返る際の基盤として活用することを勧めている。
参考文献
1)石井トク,野口恭子(編・著):看護の倫理資料集―看護関連倫理規定/綱領/宣言の解説 第2版, 丸善, 2007.
2)Anne J. Davis, Verena Tschudin, Louise de Raeve (編)/小西恵美子, 和泉成子, 江藤裕之(訳):看護倫理を教える・学ぶ―倫理教育の視点と方法, 日本看護協会出版会, 2008.
3)Sara T. Fry, Megan‐Jane Johnstone(著)/片田範子, 山本あい子(訳):看護実践の倫理―倫理的意思決定のためのガイド 第3版,日本看護協会出版会, 2010.