看護の質 quality of nursing care

「質」には二つの意味がある。一つは他のものと区別する特色で、本質という言葉に近い。もう一つは内容のよしあし、価値である。「看護の質」という言葉は後者の意味合いで用いられることが多い。わが国で看護の質への関心が高まってきたのは1990年代であり、この高まりは、高度成長期を過ぎ社会が量的な充足から質的な豊かさを問う時代へと変化し、価値観の多様化が進んだことなどを背景に、医療や看護サービスという側面から看護の質を見直す働きとして表れてきた。
看護の質は測定や評価という文脈の中で探求されているが、何をもって看護の質が高いとするかについては、多様な考え方がみられる。広範囲に用いられている考え方にアベディス・ドナベディアン(Avedis Donabedian)の考え方があり、「構造」「過程」「結果」という相互に関連しあう3つの構成要素から、看護の質を捉え保証しようとするものである。「構造」には、病院建築構造や設備、看護職の人数や配置など、「過程」には看護活動や看護職の臨床判断を含む諸能力など、そして「結果」には患者満足や入院日数などが含まれている。日本医療機能評価機構による評価やクリティカルパスの導入が盛んに行われるようになったのも、看護を含む医療の質向上が高く求められている証左ともいえる。
参考文献
1)Ora Lea Strickland, Colleen Dilorio(編)/井部俊子(著・監):看護学名著シリーズ 看護アウトカムの測定―患者満足とケアの質指標, エルゼビア・ジャパン, 2006.
2)Sue Moorhead, Marion Johnson ,Meridean L. Maas(編)/江本愛子(訳):看護成果分類(NOC)―看護ケアを評価するための指標・測定尺度 第4版 ,医学書院 ,2010.