受容とは、ある事象について評価や価値判断を加えず、それをありのままに受けとめ、心理的に安定した状態をいう。誰を受容するのか、何を受容するのかによって、自己受容、他者受容、障害受容、疾病の受容、死の受容、老いの受容、役割の受容など、様々な側面で用いられる。
死別や身体の機能的・形態的喪失、役割喪失などの悲哀からの回復過程を段階説で捉える。受容は、喪失を現実的に認識し適応に向かえるようになった回復の最終段階として位置づけられている。しかし、すべての人が受容の段階に到達するわけではなく、また、到達しても再び揺れ動くことがあり、受容はむしろプロセスとして捉えられるという主張もある。
看護職者として、看護の対象となる人々に向かい合うときに、相手の訴えや考え、感情を価値判断せず、相手の立場に立ってありのままに受け入れる姿勢を受容的態度という。その人を、何の条件もつけず、ありのままで固有の価値がある存在とみる姿勢である。受容的態度は援助的関係成立の基盤であり、人は自己が他者に受容されていると感じることで防衛的でなくなり、自己受容が可能になる。自己受容が進めばそれに伴って他者に対しても受容的になることが示されている。
参考文献
1)日本看護科学学会看護学学術用語検討委員会(編):看護学学術用語,日本看護科学学会第4期学術用語検討委員会,,1995.
2)岡本五十雄(著):ゆらぐこころ-日本人の障害と疾病の受容・克服,医歯薬出版,2004.
3)梶田叡一(編):自己意識研究の現在,ナカニシヤ出版,2002.