患者の権利 patient’s rights

患者の権利とは、患者として護られるべき、あるいは主張すべき権利のことである。
これには、①良質の医療を受ける権利、②選択の自由の権利、③自己決定の権利、④意識のない患者の権利、⑤法的に無能力な患者の権利、⑥患者の意思に反する処置に対する権利、⑦情報に対する権利、⑧守秘義務に対する権利、⑨健康教育を受ける権利、⑩尊厳に対する権利、⑪宗教的支援に対する権利がある。これらは、1981年に「患者の権利に関する世界医師会リスボン宣言」として採択され、1995年に一部修正された。これを受けて世界各国で、十分な説明を受けた上での自己決定権やセカンド・オピニオンを受ける権利、情報開示を求める権利、プライバシー保護、治療選択あるいは拒否の自由などを中心に、患者の権利に関する法律や指針が整備されてきている。
本来人間は、人間であることにより当然有する権利、基本的人権を有しているが、保健医療専門職は専門性が高いがゆえに患者は受け身の立場であることが多く、自己決定権などの権利を行使することは難しい立場におかれていた。しかし、慢性疾患中心の疾病構造への変化などから医療の成果を得るためには、患者自らが主体となって医療に参加する必要性があることや、人々の人権意識・権利意識の向上、ターミナル期の延命治療の問題などから、改めて患者の権利を明確にし、これを尊重することが求められるようになっている。
参考文献
1)日本看護協会(監):新版 看護者の基本的責務―定義・概念/基本法/倫理,日本看護協会出版会,2006.
2)George J. Annas(著)/谷田憲俊(監訳):患者の権利―患者本位で安全な医療の実現のために,明石書店,2007.
3)N. L.Diekelmann (編)/堀内成子(監):看護学名著シリーズ あなたが患者を傷つけるとき―ヘルスケアにおける権力、抑圧、暴力,エルゼビア・ジャパン,2006.