予防とは、悪い事態が起こらないように前もって防ぐことであり、医療においては、治療に対置される概念として用いられる。今までわが国では疾病が発症してから治療する治療医学が中心であったが、医療費の削減や、より健康的な国民生活を目指す流れの中で、関心が予防医学へとシフトしてきている。今日の予防医学は、傷病の発生予防と、疾病の増悪予防という2つの観点から構成され、前者は地域と社会を対象にし、後者は診療の場を対象にしている。
医療における予防は以下の3つに分類される。一次予防とは疾病の発生を未然に防ぐ行為であり、健康増進と特異的予防に分かれる。健康増進には生活習慣の改善、特異的予防には予防接種、事故防止、職業病対策や公害対策などがある。二次予防とは、重症化すると治療が困難、または、大きなコストのかかる疾病を早期に発見・処置する行為であり、早期発見と早期治療に分かれる。早期発見には健康診断(スクリーニング)、人間ドックなどがあり、早期治療には臨床的治療がある。三次予防とは重症化した疾病から社会復帰するための行為であり、機能低下防止、治療、リハビリテーションがこれに含まれる。看護においても、一次予防、二次予防、三次予防のすべてのレベルで看護活動を展開しており、これらの3つのレベルにおいて国民の健康に貢献している。
参考文献
1)Karen Glanz, Frances Marcus Lewis, Barbara K. Rimer(編)/曽根智史, 渡部基, 湯浅資之,他(訳):健康行動と健康教育-理論、研究、実践,医学書院,2006.
2)津田謹輔 (著):京大人気講義シリーズ 健康科学―知っておきたい予防医学, 丸善, 2003.
3)Geoffrey Rose(著)/曽田研二,田中平三(監訳):予防医学のストラテジー―生活習慣病対策と健康増進, 医学書院,1998.