生活リズム daily rhythm

用語の定義

「日中の活動と夜間の睡眠を基本とする活動期と休息期の2層の活動が一日周期で繰り返されるリズム現象である。ただし,生体リズム,環境,ライフスタイル,適応能力,活動への動機づけ,一日の予定,日中の活動,夜間の睡眠など,個人の内外の状況に応じて多様な側面を持つ」と定義する。

用語の背景

生活リズムとは,①日中の活動と夜間の睡眠の2層を基本とする一日の諸活動、②一日周期のリズム現象,③多様性,という3つの特徴をもつ用語である。一つ目の「日中の活動と夜間の睡眠の2層を基本とする一日の諸活動」とは、基本的な生活リズムとは一日の諸活動を日中の活動と夜間の睡眠という2層から捉えたものであることを意味している。二つ目の「一日周期のリズム現象」とは、リズムとは辞書(大辞林,2006)においても「周期的に反復・循環する動き」と説明されるように,生活リズムは一日単位で周期的に繰り返すリズムという特徴をもつことを意味している。三つ目の「多様性」とは、生活リズムとは固定的なものではなく多様な側面を持つ概念であることを意味している。
多様な各人の生活リズムを規定するものとして、①生体リズム,②環境,③ライフサイクル,④適応能力,⑤活動への動機づけ,⑥一日の予定,⑦日中の活動,⑧夜間の睡眠、という8つが挙げられる。「人間は生体リズムに基づいて,周期をもった外的環境に適応するように生体リズムあるいは外的環境を調整しながら生活をリズミカルに営む。この生活のあり様を生活リズムとよぶ(永江ら,1993)」と述べられており、生活リズムは生体リズムや環境リズムや社会のリズムとの調整や適応のあり様であり,また個々のライフスタイルや活動に対する動機やその日の予定などに応じて個別的なものでもある。さらに一度形成された後も乱れることやそこから回復することもあり、可変性のあるものでもある。
なお、生活リズムの概念は,「活動・睡眠」「リズム」という側面から「生体リズム」や「睡眠覚醒リズム」と混同されやすいが、同義ではない。生体リズムは生活リズムの関連概念であり,生活リズムを規定するものとして位置づけられる。杉田ら(2006)の生活リズムの用語の検討においても,「生活リズムは,24時間前後の周期を持つ内因性のリズムであるサーカディアンリズムと気温や湿度などの環境因子や社会的スケジュールの影響により生体が反応した結果生じる外因性リズムから構成されている」と位置づけている。また茂野ら(2007)も,生活リズムは単なる生体リズムだけを指すのではなく,外的環境により大きく変化すると捉えており,「生体リズムにもとづき,外界の環境の影響を受けて,睡眠・覚醒,活動・ 休息,食事排泄など,生活の各要素が影響しあい,その場の状況にあわせて,一定の周期で短期的,長期的に繰り返している状態」と述べている。つまり,生活リズムとは生体リズムとしての睡眠覚醒リズムを内包する概念といえる。
看護職者は、生活リズムの乱れによる問題として、①生体リズムの乱れ,②活動性の低下,③症状の悪化,④回復遅延,⑤ QOL低下を捉えており、対象者の生活リズムを整える援助を基本的援助として行っている。生活リズムが整うことにより、①生活習慣の確立,②活動性の向上,③症状の改善・防止,④回復促進,⑤ QOL向上、という効果が生じることを期待している。

引用・参考文献

1) 小板橋喜久代(1998):【夜 , 眠れない患者への看護】患者の生活リズムを重視した睡眠援助 眠れないのにはわけがある.看護技術.44(12).14-19
2) 松村明編(2006).大辞林(第二版).東京:三省堂
3) 永江美千代,正木治恵,佐藤弘美,他(1993).入院中の老人の生活リズムの分析と援助.千葉大学看護学部紀要.15.111-117
4) 大橋久美子(2010):看護における生活リズム」:概念分析.聖路加看護学会誌. 14(2),1-9
5) 茂野香おる,井上映子,八島妙子,他(2007):介護老人保健施設入居者の生活リズム調整に関する看護師のアセスメント視点.千葉県立衛生短期大学紀要.25(2).61-68
6) 杉田由加里,吉本照子,酒井郁子(2004):高齢者関連の看護・介護職のテキストにみる生活リズムのとらえ方と調整に関する援助.千葉看護学会会誌.10(2).65-71
7) 津田紀子(1993).眠れない患者への援助 実施と援助のポイント生活リズムをとりもどすための工夫.臨牀看護.19(9).1364-1368
8) 山崎あけみ(2002).時間生物学と看護―ヒトのからだと生活の場におけるリズムノシンクロナイゼーション―.看護技術.48(7).80-87